やっと? いよいよ?

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先週の暖色メインの明るい景色が、いっきにモノトーンの冬景色に変わってしまいました。

平年よりも10日遅く、午前中からショボついていた雨が昼過ぎに雪に変わり、どこか懐かしさも呼び覚ます見慣れた風景に置き換えられています。

 

この時期、毎年のことながらタイヤ交換のタイミングが頭の中に澱みます。

積雪初日の平年値を軸に、雪の気配があろうがなかろうが自分で決めたとおりに交換してしまう意志力の強い人。天気予報を気にしながらも怠惰には勝てず、一日延ばししているうちに白いものを見てしまう人。「初雪なんてすぐに融ける」と、内心の焦りを敢えて顔に出さずにいても、夜になってクルマを置いて帰宅する後悔繰り返し型のひと。

 そういう自分も、昨日の朝タイヤ交換を済ませたギリギリセーフ型のひとでした。

マゼンタをもう少し。

日が短くなり、夕方の帰宅時間は暗闇の中ですが、このところ朝の出勤時は爽やかな晴天に恵まれています。1ヶ月前には深い緑だった道路沿いの山も、少しずつ濃さを失って明るい黄色が支配力を増して来ました。

毎日それとなく見ている景色ですが、紅葉の鮮やかさは今週が盛りでしょう。いやいや、もっと言えば一昨日が一番の見頃だったでしょう。今年の紅葉を写真に留めておこうとカメラを向けながら、おとといよりも赤みが弱くなったと気付きました。

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カメラを向けるタイミングを失ったことに、ちょっと残念な思いでハンドルを持ち直して工房に向かいましたが、近くの街路樹の楓が、秋空に惜しみなくマゼンタを滲ませているではありませんか。

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いろんな気配に・・

けはい=気配をググると「確かな証拠は無いが『きっとそうだ』と自分で納得できること、なんとなく感じられる様子」とあります。

そう思って身の回りを注視すると、あるあるあるある!こんなんもそれだし、あれもそう!四六時中スマホを手放せずに忙しく暮らしている街の人達と違って、山の中で気温や天候と相談しながら仕事をしている者は、数限りない気配たちと時間や空間を共にしています。

目には見えなくてもあらゆる生き物達がそこいら中に存在する気配。木々や草花を芽吹かせ実を結ばせ、色づく葉を落とし、近づき遠ざかる季節の気配。

 例えば今日のこと。夜半までの雨は上がって、うららかな秋の日差しが柔らかな暖かさを届けてくれていますが、先週くらいまで鼻から吸い込んでしまうほど乱舞していた雪虫がまったくいなくなりました。北国の生活者にとってこの現象はあと10日程で初雪をもたらす冬の気配を伝えます。

 例えば数日前の暗がりの中。帰宅しようと車に近づくと、そこらの草影や笹薮で鳴いていた虫達が一斉に沈黙に身を預けました。すると間を置かずに5メートル程の暗闇からビエ〜〜ッツ!ビエ〜〜ッ!という、おもわず飛び上がるほどの大声が・・。一瞬の間を置いて、笹薮の中をバサッバサッツと大きくジャンプしながら遠ざかるシルエットは立派な角の牡鹿でした。毎日のように夕暮れ時から聞こえるピイ〜〜ユウ〜〜という、雌を呼ぶラッテイングコールの寂しい声と違って、すごい声量の警戒音。

感知能力を鈍らせつつある人間にすればそんな近くに居るとは全く気配に気付きませんでした。よほど驚かせてしまったようでごめんなさい。

 そして例えば自分自身のこと。この夏を棒に振った体調不良はほぼ治まって通常の生活に戻れはしたものの、先週なんの気配も無く突如激痛に襲われた左のくるぶしが治ったと思ったら、こんどは膝の半月板に障害が出そうな気配が。そればかりではありません。まったく歓迎できないことですが、身体のあちこちにプチ悪化の気配が・・・。

復活?

休業状態が1ヶ月半にもなると、さすがにそう落ち着いてもいられない。

左足のむくみは変わりないし、右膝の痛みもまだ残っているが、靴を履いて締め付ければそれほど不自由無く歩けるようにはなってきた。長い時間立っているとへたりこみたくなってしまうが、それでも少しずつは仕事ができるので、精神的には重しが取れてきた。

納期が間に合わずに、カヤック製作のキャンセルをお願いして心苦しいこともあったが、いつまでかかっても待つと言って下さる受注分が何艇も溜まっている。待って頂いているお客様にはたいへん申し訳ないことだが、待たれているという立場のなんと幸せなことか。一日でも早く完成させてお届けしたいと心から思える。

医者の話しでは、違和感無く歩けたりフツーに階段の昇り降りが出来るようになるのは3ヶ月くらいは先のことらしい。

今のところ階段のような段差の昇降は一段ずつだし、急いで歩くことも出来ないが、まあこの段階をほぼ復活できたものとして休業状態から脱出しよう。

 

海にも行かず、山にも行かず、水にも爽やかな空気にも無縁で、ただただ足の痛みや大量の汗に取り憑かれたようなこの夏も終わり、今日・明日の残暑を最後に明後日からは一気に秋の気配が支配するという。

 

対ゲリラ戦

この災厄に取り憑かれてから1ヶ月が過ぎた。

高熱、発汗、関節痛、歩行困難と、つぎつぎに障害が発生し続けている。

骨折しても2週間、何かの手術で入院してもせいぜい3週間で退院してきた事を思うと、自分の身体の治癒力低下が恨めしい。発汗をともなう高熱の頻度は下がってきたし、杖を使う事も無くなったが、左足は腫れ上がったままで靴も履けないし、右膝もほとんど曲げられない。

痛風の発作のときも同じような足の感覚なのだが、まばらに敷き詰めた(ビッシリでは無い、あくまでまばらな状態)ビー玉を踏みつけるような、裸足で砕石の上に立つような、とでも言えばその感覚が伝わるだろうか。とにかく体重が掛かると足裏が痛くて、長い時間立っている事さえできないのだ。

会う人ごとに腹が引っ込んだとやら顔が細くなったとやら、本人が「そんなにか!」と思うほど指摘される。確かにそこそこ食欲はあるのに6kgほど痩せはした。だが決して健康的な痩せ方じゃないから何をやってもチカラが持続しない。

 

医者の所見では、蜂窩織炎の症状としては、抗菌療法の効果があってほぼ治まりつつあるものの完全ではなく、生き残った敗残兵のようなヤツらが体内あちこちの筋肉組織に潜んでいて、弱った部分やもともと障害を抱えていた機能に攻撃を仕掛けてくるのだそうだ。

こいつらも最初はありふれた溶連菌や黄色ブドウ球菌だったはずだが、つぎつぎと攻撃を受けるたびに抵抗力を手にし、したたかさを身につけたゲリラとなってテロを引き起してくれる。こうした危険分子をより強力な抗菌薬を使って絨毯爆撃のように根絶させようとすると、本体の組織自体に大きな犠牲が生じる事になり、本末転倒な結果しか望めない。力で押さえ付けようとして意図せぬ反撃を受ける世界各地の現象を見るようだ。

 やはり、時間が掛かっても白血球をはじめとする、自分の自然治癒力に望みを託すしかないのか。

 

 

 

体内バトルゲーム

何だか、とつぜん降りかかったこのやっかいな現象を、振り返って想い返してみるとロールプレイングゲームのような気がしてきました。

 

ある日の午後、ジブン国は得体の知れない強烈な熱波に襲われた。この国の誰も気付かないうちに大地のわずかな裂け目から何者かが侵入し、そして天空を覆い尽くしたのだ。この災いから国を守るべく立ち上がった少年ジブンは、朦朧としながらGクリニックに辿りつく。G医師から処方された解熱ビームを頭上の熱波に照射するがまったく歯が立たない。それどころか時間の経過とともに至る所がイタミに支配されるようになり、侵入経路となった裂け目あたりが膿で覆われはじめた。

次にジブンがツールを求めて向かったのはA外科医のもと。しかしここにそのようなツールはないことを告げられ、紹介状を托されてJ国に向かうことになる。

すがる思いで辿りついたJ国の外科医は、征服者の名をホーカセキエンではないかとし、これに対抗するために飲み続けよと抗生剤を処方してくれた。

戦いはすでに2週間を超えイタミは全身に行き渡り、中でも左足の甲から指先にかけては大きく腫れ上がり、右足の膝はハンゲツバンに損傷を起し、腰椎の間板まで変形して神経に接触するので運動能力が大きく削がれてしまう。

このままでは歩行さえ不能になりかねない。ジブンは意を決してむかしツーフーで世話になったD国のO医師のもとを訪ねる。

O医師はジブンの左足を一目見るなり「よしっ!うちで治してやる!まず、このドリンクを3日間毎日飲め。その間に相手の正体を確かめてやる。そんなことよりCRPの値は即入院の数値だぞ。入院しないんなら土日もここへ来て点滴しろ。」

5日間はすぐに過ぎ去ったが腫れは思ったほど引かない。医師によるとこのイタミと腫れは、ツーフーを引き起こすニョーサン結晶が原因ではなく、何か別種の菌が足先にバリアーを築いているとのこと。さらに正体を探る必要があるから、焦らず治療に専念せよと・・。

 さあ、このあとの展開や如何に。相手の正体が判って勝負を挑めるのか、それとも・・。

イモムシの暑く長い夜

今晩の予想最低気温は25℃。144年の観測史上初、3日連続の熱帯夜。

自由に動けないみじめなイモムシの夜は長く、寝苦しい夜はなかなか朝を引き渡さない。ジツは我が家には居間にエアコンがついている。10年ほど前に、遊びに来る孫娘のために思い切って設置したものではあるが、北海道人としてはこのリモコンにさわることに大きな抵抗がある。「クーラー要らないのが北海道じゃないのか!日和りやがって。裏切り者。」どこかから聞こえて来るそんな声を振り切れないので、いまだにリモコンにさわったことが無い。そんなやせ我慢オヤジを鼻で笑うように、カミさんは手元も見ずに室温やタイマーをセットする。さすがにこのところの熱帯夜。一言も抵抗を示さず無言で恩恵に与っている自分が情けない。

 

高熱は収まってきたが、バーターでもあったように痛風がひどくなってきた。次回の診察は週末の予定だが、痛みを何とかしたくて、もともと痛風で何年も前から掛かっていたなじみの整形外科医に診てもらった。左足第一指(親指)は、食べ頃で大振りのプルーンのような紫色になってきた。

「症状が出たのはいつから?その総合病院では点滴をした?レントゲンは?えっ!抗生剤を1週間分処方しただけ? う〜〜ん、これ、ウチで治していいかい?」

異論があろうはずが無い。

「おっ・・おねがいします!」

「よし、じゃそっちで出された抗生剤は飲まないで処分して。」

 

少し希望の光りが見えてきた。だが、カフカの小説の中にいるような、汗ばむ夜はまだ続く。