インディアンサマー

なかなか里に雪が降りてこない。山の上はとうに白くなり、上等なケーキに振りかけられたフロストシュガーのような新しい白を見せてくれるが、雪線は千メートル付近に留まってモジモジしている。
否応なしにやってくる冬だから、そりゃ少しでも遅いほうがありがたいけれど、地上の生き物や木々がすでに準備を整えて覚悟を決めたというのに、肩を透かすように雪ではなく連日の雨。旭川では過去もっとも遅い初雪の記録を今日で更新し、札幌も明治期の記録に迫りつつある。

そんな雨降りばかりの北海道だが、昨日と一昨日は珍しく晴れ間が広がった。いわゆるインディアンサマーというやつだ。冬に向かってどんどん暗さを増す11月に、ぽっかりとうららかな小春日和が現れる。本来なら、この頃にはすでに幾度かの雪に覆われそして消え、すっかり葉を落とした枝を透かしてやさしい光が降り注ぎ、それがそのうららかさをより嬉しく暖かいものにしてくれるのだが。贅沢は言えない、雨降り続きの陰鬱な今年の11月でも、それはそれなりにありがたいことだ。

1ヶ月も前から風のない晴れ間を見つけては飛び回っていた<雪虫>たちも、昨日はこれがラストチャンスと大発生大乱舞。北海道と東北地方の初冬の風物詩ともいえるこの雪虫のことを、見たことのない暖かい地方の方々にも知ってもらいたいが、どうしてもかなり込み入った話になることが避けられないので、また次の機会にということにしておこう。