間男退散

朝、工房裏手の陽あたりの良い斜面に3頭のキタキツネがいた。いちばん下の位置で前脚にあごを乗せてうずくまり、見慣れたルルがまどろみながらくつろいでいる。向かって数メートル右上には、腰を下ろしてはいるが首を突き上げてなにやら警戒気味の今年のパートナー。その2頭から10メートルほど離れた左上方に、毛並みから若さの窺えるもう1頭。
子育て時期でもないこんな季節に3頭も一度に目にするというのは珍しい。
分れたはずの子ギツネだろうか。

じっと眺めていると、左側の若いヤツがルルに向かってモーションをかけているようだ。
「そんなオッサンより俺と行こうよ。いいとこ知ってるから・・。」

<ここは器の大きさで勝負>と、動きを抑えていたオッサンが、これ以上の無礼を許してはならじと立ち上がった。グャン!グャン!と、犬かと間違えるような短い声で吠え立てながら、足にまとわりつく雪を蹴散らして猛然とダッシュ
追われる方も逃げる逃げる。時々滑りながら走る足取りに必死さが伝わる。
尾根の上まで逃げ切ると、振り返って負け惜しみの遠吠え。ギャウ〜ン、ギャウ〜〜ン。

近くまで戻ってきて、見得を切るように佇んでみせた写真のこのオスを、なんとなく”ショーン”と名付けることにした。

ちょっとタレ目で声がイヌのようだけど、まだまだイケそうなオッサンを、これから半年あまり遠くで見守らせてもらおう。