ギョウジャニンニク

窓の外の景色の片隅に残っていた雪が今日やっと消えた。
遅い初雪だった去年の11月から一度も消えることなく、ずっと土の上に乗っかっていた白いヤツが視界から去った。
同時に今日の朝、史上2番目に遅いというサクラの開花宣言が札幌に出された。

サクラが開花といってもそれは街中のことで、工房周辺のエゾヤマザクラは蕾さえ固いままだし、日陰の軒下にはまだたっぷり雪が残っている。それでも、笹薮の中のギョウジャニンニクの、朝露に濡れる柔らかい緑を見て、気分はきっちり春に切り替わった。

このギョウジャニンニク。誰が何と言おうと北海道では春の山菜の王様・横綱・大統領。
同じものは東北や信州の高地にもあるが、上品な器に数本鎮座してン千円もする貴重品らしい。
さすがに最近は北海道でも都市部周辺で見つけることは困難になったが、人手のあまり入っていない沢や斜面を探すと鎌で刈り取るほど群生していることもある。
タラの芽やフキ、ウド、ワラビ、たけのこなどが春を満喫させてくれる前に、道産子はコイツの強烈な香りを体内に取り込んで冬を振るい落とす。

おひたしや卵とじなどの定番メニューもあるにはあるが、ジンギスカンや焼肉の付けあわせにワッと焼く、ニラの代わりにモツ鍋にどっと突っ込む、いいやそんなもんじゃ物足りない、豚バラと一緒にガッと煮込んで<春旬鍋>だ。
まだまだあるぞ、味噌を付けて生でかじる辛さも日本酒に合うし、生醤油にそのまま突っ込んだ醤油漬けを、みじん切りにして白いご飯にのせるのも絶品。

季節の区切りに絶対必要な味覚を一つあげろと言われれば、迷わず挙げる春の恵みだ。