ルル受難

去年の10月から続いていた知床峠の冬季通行止めが、この1日に8ヶ月ぶりの解除になった。昨日2日は、中山峠スキー場が営業を終えた。
さあ、これで春も終わり、短いけれど心の奥が沸き立つような夏が始まる。

そんな歓喜の季節が始まったというのに、このタイミングでルルがケガをした。
この写真では目立たないが左の後脚を骨折しているようだ。四足で立つ時にはそっとその足を下ろすが、歩くときには後脚を引き上げてたたんだまま、ほかの3本の足でケンケンをするように飛び跳ねながら進む。

そういえば先週からこのあたりに羆の気配があって、3日まえにもすぐそこの道路脇に洗面器一杯分の真っ黒いウンコが盛り上がっていた。まさかその羆に吠え付いて排除されたのか?いやいやヤツの爪に掛かったら血だらけになるし、骨折どころでは済まないはず・・。
んっ!鹿か?でかい角の牡鹿が最近この辺をウロついている。昨夜も右から左にすごいジャンプ力でボンネットを飛び越えて行った。あの角にかけられたらそういうことにもなるか・・。
それよりいちばん可能性の高いのはクルマとのアクシデントかもしれない。

抱きかかえて動物病院にでも連れて行きたいが、彼女との間には越えようのない深い溝がある。痛々しい想いを呑み込みながら、ただ見守るしかすべは無い。
野生下で、ネズミを捕らえる為のジャンプ力を失ったビッコのキツネが、この先何事もなく生き延びて行けるとは思えない。
耳を後ろに倒し、鼻先から尻尾までを一直線にして、風に逆らう一本の矢のように美しく走り去る姿はもう見ることができないのか。

全ての動物がそうするように、毛が剥げてしまうほどひたすら患部を舌で舐める。ルルにとっても、それが自分で癒す唯一無二の方法なのだ。

日常を過ごすに充分な程度でいい。痛みを舐め取って少しでも回復し、迫り来る死を追いやってくれることを願うばかりだ。