春呼ぶ垂り

春らしさを帯びた陽光のせいか、もう寒さに痛みを覚えるほどのことはありませんが、3月に入ってもずっと氷点下の日が続いています。この連続した3月の真冬日は、8日の時点で81年ぶりだと新聞が伝えていました。今日は10日ですから記録はもっと更新されているのでしょう。
例年この時期になると、冬のあいだ頻繁に除雪される道路だけは黒々とアスファルトをのぞかせるのが常ですが、今年はまだ白い轍が黙って伸びています。



空気は氷点下でも、軒のトタンは太陽に温もりをもらいはじめました。夜のあいだに積もったわた雪が少しずつ解かされ、垂り(しずり=雪が解けた水が垂れること)となってひさしに氷柱を作ります。その先端から水滴となって離れるとき、まるで太陽に同調するように光りながら雪面に落ち、そしてまだ見えない土に吸い込まれてゆきます。