元気な人

「あのう、パタゴニアでお世話になったTですけど・・。」と、???な電話。
「はァ? エエと、どちらさん?」と一瞬の時間を作ってなんとなく思い出した。
突然で申し訳ないけど、相談にのって欲しいからこれから行くとのこと。

南米最南端のケープホーン遠征で一緒だったTさんは、18年ぶりというのに工房の場所をちゃんと覚えていて1時間ほどで到着した。あの当時30過ぎだったTさんは、ちょっと肥った白髪あたまのオッサンに変わって(他人の事は言えないが)いたが、昔と同じ声やしゃべり口がうれしかった。

以前勤めていた大企業の研究所を辞め、北大の大学院に入り直して特定外来生物の研究をしているとのこと。同じ研究室の同僚のS氏を伴っての相談とは、アライグマ用の壊れない捕獲罠だそうだ。大分県でウミガメの卵を食うアライグマの駆除に、北大の協力で成功したとの記事がちょうど朝刊に載っていたことを話すと、まさに彼らのことだという。
トラップに入ったアライグマは野獣の誇りを剥き出しにし、決して諦めることなく死に物狂いで脱出を図る。そして多くの場合それは成功するのだそうだ。
実際の効果は試してみないと判らないが、壊されないための幾つかのアイデアが話にのぼり、収穫有りとの顔つきで二人は帰っていった。

赤ん坊だった息子さんのことを尋ねると東京で大学生をやっているという。
T氏本人が大学院で何を修め、そしてどう将来につなげたいのかは聴かなかったが、年齢よりも元気な顔で帰るのを見送ったあと、ちょっとうらやましい思いが浮かんできた。