ホオジロくん


半月ほど前からのこと、ホオジロくんが一日に何度もこの車の周りにやってきます。
ホオジロさんではありません。メスの顔は全体が茶色っぽいので違います。これだけ黒と白のはっきりした顔はホオジロのオスなのです
いくら整った顔立ちといっても、ここまでナルシストの小鳥は見たことがありません。バックミラーのこのステーがお気に入りで、自分の姿を鏡に映しては、ちょっと首をかしげたり伸び上がってみたり、背中を向けた体勢から顔だけフッと振り返ったり。まあ、窓の向こうででっかい人間が見つめていても素知らぬふり。
工房の窓ガラスやクルマのウインドに我が身を映すのも好きらしく、バードストライクのように突撃して失神するほどではないのですが、ガラスにクチバシやからだをぶつけながらしばらくホバリングを続けるのです。

最初に見かけた時は、珍しい行動にしばらく釘付けにされましたが、毎日となるとそれほど気にもならず、また来てるな程度の反応しかありません。むしろこの立ち位置の下のボデーがウンコだらけで腹立たしい。追っ払ってやろうか。でも、彼にとって本来の場所である工房向かいの林の中に、時おり戻ってさえずる声の美しいこと。
ピッピチュ ピーチュー ピリチョリピーーッ  
なんと表現したら聞いていない人に伝わるのか、この難しさに、昔の人は開き直って”聞きなし”を編み出しました。
それによると、ホオジロのこのさえずりは、「一筆啓上仕裏候(イッピツケイジョウツカマツリソウロウ)」と聞こえるとか・・・。