冬支度 覚え

18日の朝、いつもの通勤ルートの街路樹がこのうえなく鮮やかだったのです。真紅とオレンジと黄金色が快晴の空に負けじと輝いていました。

19日。「昨日はカメラを持ってなかったから今日こそは」と期待したのに、木枯らしのせいでハラハラと葉を落としはじめ、たった一日だというのにその見事な紅葉も心なしかくすんで見えて、レンズを向ける気になれませんでした。

20日は夕方からしのつく雨でした。そろそろ寝ようかと窓の外を見ると、さっきまでの雨粒が白いものに。そして翌21日、朝目覚めると一面の銀世界。毎年かならずこの時期にやってくる光景ではあるのです。でも今年はちょっと早めでした。

そして、これもまた毎年のことですが、この白いヤツは北国の生活者を一気に焦らせるのです。

「とりあえずクルマのタイヤを交換しないと、この雪道は夏タイヤじゃ走れない。あ〜あ、やっぱり先週やっときゃ良かったなあ。ワイパーも冬用に換えないと。そうそうスノーブラシとスクレーパーはどこだっけ?家庭菜園のキュウリやトマトは一昨日片付けたからOKだけど、鉢植えの花が雪だらけだよ。」

冬を受け入れるための雑事に追われながら、童話の<アリとキリギリス>を思い浮かべます。

「ま〜だ大丈夫。どうせこの時期の雪なんて降ってもすぐに融けるし、道路がアイスバーンになるほど冷え込みもしないから、タイヤ交換は月末にしよう。急ぐこともないさ。」
「庭木の冬囲い?ああゼンゼン大丈夫。根雪になるのはまだずっと先だし、それまでにはやるって。」
「ええと、ストーブの用意か。それと灯油もか、そのうち見とこう。」
「そろそろだなア、でもめんどくさいなア、もうちょっと先でもいいや。」

そんな先送りのツケをかじかむ手に感じながら、時間に追われてアリのように動き回っているのです。