1kmのサファリ

宅配便のおばちゃんが、いつもよりちょっとだけ高揚したトーンで話しかけてきました。
「すぐそこにおっきなシカがいるよ!近づいても逃げないのさア。こ〜んな角でおっかないよね。」
今週あたまの呑み会に暗くなってから到着したM氏も、「タヌキがいましたよ。」・・と。

毎日ではありませんが、工房から国道沿いの団地までの1kmちょっとの山道では、いろんな野生動物によく出くわします。

数日前に暗くなってから家路に付いたときにも、道路に出てすぐにいつものエゾタヌキのファミリーに出会いました。今年は3頭の子連れで、母ダヌキとあわせて4頭がときどき人間様の作った道を利用します。ただでさえシャープさに欠ける動きの4頭のエゾタヌキが、クルマの行く手で右往左往。ゆっくりゆっくりクルマを進めながら、ハンドルにあごをのせるようにしてモコモコ走りまわる様を見せてもらいます。

やがて右側の笹薮に4つのモコモコが吸い込まれるように消えると、同じ右手の30メートルほど先にオスのエゾシカの立ち姿が・・。ヘッドライトに照らされた周囲の中で、ひときわ目立つ薄緑色の二つの眼光。
こちらを確かめるようにジッと見つめ、2〜3秒後、迷惑そうな緩慢な動きでヤブの中へきびすを返しました。

それから2百メートルほど進むと今度は前を行くキタキツネの姿。軽快なトロットのリズムをちょっと落として後ろを振り向くと、こんどは道なりに猛ダッシュです。イジワルする気はないのですが、ついついアクセルを踏んでついて行ってしまいます。後ろから追い立てるようなかたちになってすまない思いもチョットだけ。

ほかにもこの時期のこの道路上は、昼間ならエゾリスがあわてて横切り、夜遅くなれば道際の低い位置でアライグマの目が光ります。
極めつけは春先に見かけるヒグマでしょう。今年も三度ほど見かけましたが、こいつに逢うとそのあと何日かはほっこりしたおもいで過ごせます。

たった1kmほどの山道ですが、見方によっては無料でサファリを楽しんでいるようなものかも知れません。

これを書いている今も、道路の向こうの沢あたりから、ピ〜〜〜〜ユ〜ウ!と、牡鹿の声が聞こえて来ます。