桜を見る会→サクラを守る会

とくに用もないのにYさんが立ち寄った。ドアに手をかけたまま空を見上げて、

「やーいや、どしたんだべ、ゼンゼン降らねえな!街の方なんか雪融けて道路が川みたいになってワヤだ。今もそこの下の信号んとこでよ、女子高生二人、ガサイ運転する4トン車に頭から泥水かぶせられてよ、可哀想に、泣きそうになってたど。

このまんま春になるんだったらいいったって、そうはいかねんだべなこれが。でも、あんたんとこだって今年の除雪はたいした楽してるべ。除雪機廻すほど雪降ったの2〜3回でないか。」

「いや、オレは肩の手術したってのもあるけどこの冬一回も除雪機使ってないんだ。」

「あ〜そうか、肩悪くしたんだもな。そんなら雪少ない方がありがたいさな。ところでありがたいって言えばよ。ここんとこ毎日毎日新型コロナのニュースばっかりだべ。あれって安倍晋三にとったらほんとに有難いことだと思うど。まあ、国会でも桜を見る会でワイワイやってはいるけどよ、報道と国民の関心は問題にならんくらいウイルスだべ。安倍政権になって一段と強引さを増したすっとぼけとはぐらかしの茶番はもう見たくないしな。」

「隔離して封じ込めるってのは完全に破綻して、クルーズ船が巨大な培養器になっちゃってるし、国内のあっちこっちでウイルスが拡散しかかってるのに、国レベルで科学に裏打された確かな情報を出さないから、みんなが疑心暗鬼になってくるんだよ。かかっちゃったヤツはともかく、予防の効果は殆んど無いって言われても不安が後押ししてマスクは店頭から消えちまうしな。

桜を見る会では、またマルチまがいの社長と写った画像が出てきたけど、これも勝ちパターンの公文書廃棄と個人情報で軽く乗り切るさ。でもこのタイミングでの新型コロナウイルス騒動は、マズい火種をボヤで消せるから安倍さん感謝感謝だろう。」

「あれがこの国のリーダーで他に代わるヤツがいないってのも哀しいけど、まあ次々とバカ大臣が続いてくれるよな。自分でしゃべれなくてメモしか読めないんなら、せめてちゃんと読めよな。サクラの役にも立たねえんだから。」

「日本人なら子供の頃からイヤってほど言われた筈だ、<一つウソをついたらそれがバレないように百のウソを重ねなきゃならない>ってな。官僚トップにもなって、子供でも分かるウソをつかされる役人の辛さと哀しさに同情はするけど、嘘つき政治家の逃げ切りに手を貸すことが、自分や家族の尊厳まで犠牲にするだけの価があることなのか。モリカケ問題だって、時間の経過で今では無かったと同じになってしまったけど、あれは誰が見たってクロだろう。国会対応だって、日本男児としての潔さやサムライの美学がかけらも無いないもんな。役人や取巻きを切腹させても、おのれは黙って逃げ切る政治屋の醜さと、そんなリーダーにアウトを宣告できない無力さが、ジワジワとこの国の活力を蝕んでるんだわ。」

「んだな。公文書を無かったことにするほど、いいふりこいて800人も功労者名目のサクラどもを集めたんだからよ。そいつらを無かったことにしちゃダメじゃん。それにしても、一人のサクラも名乗り出ないってのもな。サクラなんだからしょうがないか。」

 

最近少し健康を気遣うようになったYさん。タバコを2本で止めて帰って行った。