カーテンの上と下

毎朝、鍵を開けて仕事場に入るとまず全部のカーテンを開けるのが習慣です。というより、遮光カーテンなので、開けなければ部屋が薄暗くて一日が始まるムードになりません。

部屋に入るなりシャーッ、シャーッ、と勢いよく開けて回るのですが、天気の良い日は陽当たりの良い窓のカーテンはちょっとした注意が必要です。

窓枠の溝にそってヘビ君が気持ちよく日光浴を楽しんでいることが度々です。

 

この日もそうでした。開けようとしたカーテンの下から、見慣れた青大将の太い胴体が何カ所かで垂れ下がっています。カメラを向けてそ~っとカーテンを開けようとすると、迷惑そうな動きで、おもむろにテレビの裏のゴチャゴチャした配線の中に入っていこうとします。侵入者らしさの欠片もないそのふてぶてしい様子にちょっとカチンときて、部屋から引っ張り出してやることにしました。

ゴム手袋でもしていれば別ですが、素手でこいつを物陰から引っ張り出すのは容易ではありません。掴んだ手に脂が付くことは無いのですが、まるで身体中に薄く脂をひいたように滑ります。頭を掴めればいいのですが、胴体や尻尾を掴んでウロコの向きに逆らって引っ張っても、何かの角などに身体を絡ませたらまずすんなり勝利することができません。まあ、この時はなんとか引っ張り出したのですが、生きたままヘビの全長を測るのはこれまた困難です。くねくねと暴れるヤツを床に置き、右手で頭を押さえながら左手で尻尾まですばやく伸ばして、だいたいの位置を覚えておいて後で測ってみました。アオダイショウとしては平均以上の長さで約140cm。なかなか立派な奴でした。

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やれやれ一件落着・・と、改めてカーテンに手を掛けると、そのカーテンの上にももう一匹。まったく動じることなく今の騒ぎを見下ろしていたみたい。

でもこいつはそれほどの長さではなく、目視ではまあ1メートルはない様子。無表情な丸い目と見つめ合ってしばらくフリーズした後、ゆっくり引き下がって頂きました。

 

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幼少期を本州の田舎で過ごした自分にとって、このアオダイショウという爬虫類はそれほど忌み嫌う存在ではありません。

旧家や商家の奥には必ず土蔵があり、その蔵の暗がりにはヌシといわれるこいつらが密やかに暮らしていたものでした。鼠小僧も入れないという真っ暗な土蔵の中にどうやって入りこむものやら、そのころ謎だった<?>は今でも心の奥に在り続けています。

「悪さしちゃあいけんよ。ヌシさんじゃけえ。これがおんさるけえこの蔵がネズミに荒らされんで済んどるんでね。」いまは亡い祖母から何度も諌められたものです。

たしかに冬場を除いて工房の中がネズミに荒らされることは無くて済んでいます。

雨模様だった昨日はいませんでしたが、晴天の今日はやっぱり寛いでいました。

ただ、毒を持たないとは云え、音もなく入り込み、音もなく白いウンコを残していく困ったヤツらではあります。