代理戦争

プーチンが暴挙に踏み出してからひと月半。

ウクライナ側の予期せぬ抵抗に、ロシア側は当初の計画の見直しを余儀なくされ、キーウ周辺からベラルーシへ撤退。と同時に民間人に対するおぞましい蛮行が明るみに出て、世界中のメディアが四六時中それを伝える。言葉を失うショッキングな映像に、国連の人権理事会は多数の賛成をもってロシアを排除したが、プーチンに戦争そのものを止めさせることは誰にもできない。

声高に非難する西側諸国に同調して民主主義を標榜する国は多く、国連加盟の過半数が非難決議に賛成するが、漁夫の利を待つ中国をはじめとする一部の国は制裁に反対する。プーチンの顔色をうかがいながら反対や棄権に回る国は、その数こそ少ないが、人口規模では賛成各国を上回る。

核戦争は避けねばならぬと西側は言うが、ロシアの圧倒的軍事力の前に、ウクライナは手持ちの通常兵器だけで抵抗するしかない。ゼレンスキーは好んで西側の代表をやっている訳ではないのだ。

世界は大きく割れてしまった。両陣営の軍備はますます拡充されるだろうし、経済圏も二極化が進むだろう。この世界が2022年2月24日以前に戻ることは無い。

 

太陽の光は強さを増し、積雪がどんどん下がってきているのを確かめたくておもてに出てみた。

天空のどこかから「こぅこぅ」と微かな声。眩しい青空に目を凝らすと、高いところに楔型を乱さず北を目指すハクチョウの群れ。これから宮島沼やクッチャロ湖でしばし休んだ後、彼らが繁殖のために目指すロシアは、きっと静かな楽園だと思いたい。