はるか昔、十代の終わり頃のこと。当時住んでいた東京から、転勤で島根から移動した両親を訪ねて鳥取に旅したことがある。 不肖の息子ではあったが、温かく迎えてくれ、夕食が半ばすすんだところで一杯入って機嫌の良さそうな親父から唄が出た。当地に伝わる…

遅れてきた初雪はひと月前から一度も消えることなく次々と降り積り、予感が当たってとうとう根雪が確定してしまいました。根雪の定義はけっこうややこしく、正しく理解している人は少ないようですが、気象台の露場（ろじょう＝芝で覆われた日当たりの良い平…

「やいやー、ワヤだな。今年は雪おそくてたいした塩梅よかったのにョ。来たと思ったら一気だもなァ。」頭や肩にのせた雪を払い落としながら、農家のYさんが入ってきた。 この人、選挙が近くなると顔を出す。いつものように「○○に頼むでや！」と言うのかと思…

除雪の手を休めて梢に目をやる。 これ以上無いほどに白くそして柔らかい雪が、いま落ちてきた澄み渡る碧空に手を伸ばしている。北国の冬の青空がこんなにも透明で蒼いのは、緯度が高く気温が低いからだと何となく思われているがそれだけではない。 ゆっくり…

「札幌市の昭和」という写真集を予約までして手に入れた。写真と説明文を読みながらパラパラめくっていくうちに、ちょっとした違和感がどんどん増幅してくる。どうしても腑に落ちないので、出版社をネットで検索した。 ハハァ、そういうことか。騙されたとま…