旅の支度 今昔

むか〜し行ったカナダやアラスカにまた行ってみたいと何度か気持ちが盛り上がったことがある。
子供達が小さい時にはその旅費が障害になって立ち消えたし、それからも「行きたいな」「そうだね」と言いながら具体化することなく遠ざかっていくのが常だった。
日々の生活のなかで優先順位の低い漠然とした望みを実現させるためには、何かちょっとしたきっかけが必要だ。そのチョットしたことが強力なファクターに変わって、いきなりその方向に動き出すことがある。

昨春、ニュージーランドに同行したN夫妻にそれとなく誘いかけてはいたのだが、諸般の事情が許しそうも無い旨を伝えられてそれは諦め、また立ち消えになるかもしれない自分達二人だけでの計画を模索していたところ、6月に「やっぱり一緒に行きたい」とのメールがN氏から届いた。
かくしてこの旅はいっきに具体性を帯びることになる。
時期はハイシーズンを避けて秋の初めの2週間以内。コースはバンクーバーからバンフ・ジャスパーなどのカナディアンロッキーの周遊と、時間が許せばアメリカに入ってシアトル周辺を観光。

計画が具体的になってからの1週間、ちょっとした仕事の隙き間や夕食後にパソコンに向き合うだけで、航空券やキャンパーなどほとんど全ての予約が済んでしまった。

想い返すと現代のこのIT環境はやはり驚愕に値する。

40年前、若かった我々夫婦がアメリカ旅行を計画したとき、それを実現させるためには1年半も前から多大な努力が必要だった。
今回の旅行とは規模も期間も違いはするが、その旅に使うクルマを日本から運ぶ手続きや、北アメリカ全土を走り回る計画の資料集めのために、寝ても覚めても頭の中が一杯だったし、やりとりした郵便物は小さめの段ボール箱では入りきらないほどだった。

それはそれで自分の人生を変えてしまうほどインパクトのある旅になったのだが、計画実現のためにどれだけの時間や体力を消耗したかを思い起すと、国境の無いインターネットを使った今どきの海外旅行の手軽さは信じ難い。
まさに<隔世の感を禁じ得ない>とはこのことと実感した。