2015-01-01から1年間の記事一覧

春のお裾分け

工房の前に立つ十数本のシラカバの樹は、田中角栄の列島改造論に日本中が浮かれた頃、耕作放棄された畑にいち早く根を下ろした自然界のパイオニアでしたから、かれこれ樹齢50年近くになるでしょう。胸高直径は40〜50cmになり、毎年サクラの開花と競う…

受難

この冬、増え過ぎたエゾシカによる被害が、とうとう市街地に隣接したSさんのリンゴ園に及び、全ての木が樹皮を喰い剥がされてしまった。ここまでやられるとどう手当をしても枯死が免れない。去年までに別のリンゴやサクランボの畑を全部やられ、放棄して更地…

枯葉の力

繰り返しタイヤに踏みつけられ、何ヶ月も冷気にいたぶられて分厚く凍て付いた道路脇にミズナラの枯葉が貼り付いていた。 秋の終わりにこの枯葉が葉としての役割を終えてからずいぶん時間が経っている。それに全ての落ち葉は厚い雪の布団の下で土になる準備を…

記憶を手繰る

冷えきった身体を湯ぶねに浸して二度ほど唸ったあと、やや間を置いて子供の頃に聞き覚えた民謡が弛緩した腹の奥底から出て来た。半世紀も前のことだから順番こそ違うかもしれないが、つらつらと次から次につながって歌の文句とその頃の情景が脳の奥でフラッ…

いよいよ・・

いよいよだ。もうじき始まる。 3月半ば。 うまくいって10日間。年によっては1日あるかないか。 何もじゃまするものの無い完全な自由。陽光と冷気のコラボレーション。 スノーシューなんていらない。ツボ足で何処へでも行ける。、 凍り付いた堅雪の表面は…

毎朝の山

この二十数年間、毎朝、仕事へ向うフロントガラスの先にこの山を見てきました。いや、改めて振り返ってみると、確実に前方にあったのに目で見てははいない時もあったように思います。それほど当たりまえの風景として意識を引きつけなかったのでしょうか。こ…

除雪

工房の除雪風景を初めて写真に撮りました。 これまで冬の間はほとんど一人の作業だったので、除雪する自分を撮れる訳もなく、ましてそんなことを思いつくことすらありませんでした。写真は息子が調子良く除雪機を操作する様子で、晴天の下、気持ち良さそうで…

ここは奈良か!

毎朝の通勤時に、道路脇や山の斜面にエゾシカの姿を見つけるのがこの時期の小さな楽しみだ。といっても、それは鹿には全く関係ない人間の勝手。鹿の方にしたら、木の皮や枝先の冬芽で飢えをしのぎ、身を隠すものさえ無い裸の雪山で、死を排除するためにあえ…

ビブラム神話

いかにも米国的で無骨なこのソレル社の防寒靴を、冬の間じゅうずっと履き続けてきました。おそらく今度の靴で5代目か6代目ですから、愛用するようになってからもう30年以上にもなるでしょうか。 靴底の減りが気になり出した3年ほど前から、買い替えよう…

潔よくあれ

前回「武士は喰わねど」と書いてから、つれづれに今は亡き父親のことを想い出しています。 人生に大切なこととして伝えておきたかったのか、それとも半分は自分自身に向っての呟きだったのか、今となって判別することはできませんが、数十年の時を経た遠いと…

サムライの子

懲りずに毎日降り添える雪を除雪していたときのことです。思い切り遠くまで飛ばしてやろうと、除雪機を高速回転にするのですが、強い向かい風には勝てません。つぎつぎ飛ばす雪のほとんどは思った位置より手前に押し戻され、なかんずく自分自身の目といわず…

それぞれの冬

誰かれとなく、ちょっとした挨拶代わりに「いやァ、雪少なくて楽だねェ」と言葉を交し合っていたのもお正月まででした。先週半ばから3日続いた降雪で、工房の周辺は一気に1メーターを超す雪原となり、あまり嬉しくはないものの、見慣れた真冬の景色が広が…