雪の蔵

今年も無意根山の残雪が光る季節になってきました。 晴れた日の朝、この山の白さが目に入る度に清々しさが、そしてそれと共に感謝の気持ちが湧いてきます。 真夏の7月に白さが無くなるまで、大量の水が雪のかたちで山肌に残り、梅雨のない札幌の街に水不足…

ヘビだって恋する初夏

どうも毎年この時期がヘビたちの交尾期になっているようです。 去年もそうでした。想い返すと5月の末から6月の半ばまでの暖かい日、毎年必ず一度や二度はテレビの裏側の暖まったスペースで濡れ場を演じてくれます。 2012年6月19日に書いたような3…

500本の色鉛筆

いっときの主役だったサクラやコブシが舞台下手の袖に引っ込むのを待っていたかのように、その他大勢のあらゆる樹々の若葉がいっせいに萌え出しました。 毎朝目にする道沿いの山も、モコモコモコモコと膨らんでいます。 テキトーな写真で伝わり難いけれど、…

草もち

写真中央にいる帽子の女の子。このメンコイ4才の孫にね、春になったらみんなで草餅ついて食べようって、雪深い頃に言ったんですよ。 そのときのこの子の頭の中は??がいっぱい。『えっ、草? くさなんか食べるのやだナ』・・・ンで、きっぱりと断りました…

ジェラシー?

二ヶ月くらい前の朝方、留萌沖を航行中の<そうや>(昔の南極観測船。今は<しらせ>に南極を任せて北の海で活躍)から電話が入った。北極や南極で極地の気象や氷を研究している知り合いの准教授からだ。数日前に台風並みに発達した二つ玉低気圧が北海道に…

気配

雪の白さと黒い地面のオセロゲームが始まると、冬のなごりを押しのけるようにフキノトウが枯れ野から吹き出します。地肌にちらばる萌黄色の点々は、遠目にはまるで満天の星のように光って見えています。 コブシやサクラの開花と競うように、これから10日ほ…

もりのクマさん

工房のすぐ近く、前回の画像と同じ湿地で今朝ヒグマを見かけました。工房に置いてあるカメラを持って、足音を立てないようにそっと引き返し、姿が確認できてからは腰を屈め、息を殺してジリジリと間合いを詰めます。冬籠りから目覚めたばかりののこの時期、…

春に響く声

いつもグズグズと去りぎわの悪い冬が、今年はあっさりと春にこの土地を任せて退散したようです。工房の近くの湿地から何かの気配がしていました。といっても100メートル以上離れた場所。耳を澄ますと僅かに、ヒリヒリヒリヒリというかシャラシャラシャラ…

春のお裾分け

工房の前に立つ十数本のシラカバの樹は、田中角栄の列島改造論に日本中が浮かれた頃、耕作放棄された畑にいち早く根を下ろした自然界のパイオニアでしたから、かれこれ樹齢50年近くになるでしょう。胸高直径は40〜50cmになり、毎年サクラの開花と競う…

受難

この冬、増え過ぎたエゾシカによる被害が、とうとう市街地に隣接したSさんのリンゴ園に及び、全ての木が樹皮を喰い剥がされてしまった。ここまでやられるとどう手当をしても枯死が免れない。去年までに別のリンゴやサクランボの畑を全部やられ、放棄して更地…

枯葉の力

繰り返しタイヤに踏みつけられ、何ヶ月も冷気にいたぶられて分厚く凍て付いた道路脇にミズナラの枯葉が貼り付いていた。 秋の終わりにこの枯葉が葉としての役割を終えてからずいぶん時間が経っている。それに全ての落ち葉は厚い雪の布団の下で土になる準備を…

記憶を手繰る

冷えきった身体を湯ぶねに浸して二度ほど唸ったあと、やや間を置いて子供の頃に聞き覚えた民謡が弛緩した腹の奥底から出て来た。半世紀も前のことだから順番こそ違うかもしれないが、つらつらと次から次につながって歌の文句とその頃の情景が脳の奥でフラッ…

いよいよ・・

いよいよだ。もうじき始まる。 3月半ば。 うまくいって10日間。年によっては1日あるかないか。 何もじゃまするものの無い完全な自由。陽光と冷気のコラボレーション。 スノーシューなんていらない。ツボ足で何処へでも行ける。、 凍り付いた堅雪の表面は…

毎朝の山

この二十数年間、毎朝、仕事へ向うフロントガラスの先にこの山を見てきました。いや、改めて振り返ってみると、確実に前方にあったのに目で見てははいない時もあったように思います。それほど当たりまえの風景として意識を引きつけなかったのでしょうか。こ…

除雪

工房の除雪風景を初めて写真に撮りました。 これまで冬の間はほとんど一人の作業だったので、除雪する自分を撮れる訳もなく、ましてそんなことを思いつくことすらありませんでした。写真は息子が調子良く除雪機を操作する様子で、晴天の下、気持ち良さそうで…

ここは奈良か!

毎朝の通勤時に、道路脇や山の斜面にエゾシカの姿を見つけるのがこの時期の小さな楽しみだ。といっても、それは鹿には全く関係ない人間の勝手。鹿の方にしたら、木の皮や枝先の冬芽で飢えをしのぎ、身を隠すものさえ無い裸の雪山で、死を排除するためにあえ…

ビブラム神話

いかにも米国的で無骨なこのソレル社の防寒靴を、冬の間じゅうずっと履き続けてきました。おそらく今度の靴で5代目か6代目ですから、愛用するようになってからもう30年以上にもなるでしょうか。 靴底の減りが気になり出した3年ほど前から、買い替えよう…

潔よくあれ

前回「武士は喰わねど」と書いてから、つれづれに今は亡き父親のことを想い出しています。 人生に大切なこととして伝えておきたかったのか、それとも半分は自分自身に向っての呟きだったのか、今となって判別することはできませんが、数十年の時を経た遠いと…

サムライの子

懲りずに毎日降り添える雪を除雪していたときのことです。思い切り遠くまで飛ばしてやろうと、除雪機を高速回転にするのですが、強い向かい風には勝てません。つぎつぎ飛ばす雪のほとんどは思った位置より手前に押し戻され、なかんずく自分自身の目といわず…

それぞれの冬

誰かれとなく、ちょっとした挨拶代わりに「いやァ、雪少なくて楽だねェ」と言葉を交し合っていたのもお正月まででした。先週半ばから3日続いた降雪で、工房の周辺は一気に1メーターを超す雪原となり、あまり嬉しくはないものの、見慣れた真冬の景色が広が…

キッズパルクとSuica

数量限定の記念スイカの発売をめぐって、東京駅周辺が機動隊も出動する大変な騒動になったようです。徹夜で並ぶ事が禁じられたのに、それを守らず、あるいはそうと知らずに徹夜した人たちが記念スイカを手にし、始発で来て並んだ人達はあまりの人出に発売が…

吹雪が去って

今週半ば、数年に一度という猛烈に発達した低気圧がオホーツク海上に出現し、北海道をはじめ全国に積雪と強風を押し付けていきました。週のはじめに九州の東方海上にあった1000hpちょっとのごく普通の低気圧が、上空の季節風に押されて北北東へ進みなが…

季節をまたぐ

先週、所用で東京へ行って来ました。 北海道から本州へ飛行機でひとまたぎするとき、冬に向っては季節が2ヶ月ほど逆戻り、その反対に夏に向っては1〜2ヶ月先に進みます。 雪こそ少ないものの、氷点下の朝に札幌を発って数時間後に湘南を走るのはなんとも…

センキョ

「オーゥ、しばらく!! 元気してたか?」 去年まで農家だったYさんが、いつものように突然しゃべりながら入ってきた。 「アベノミクスだかハゲノミクスだか知らんけどよ、またセンキョっちゅうんでないか。いい加減にすれっちゅうのよな。今だら負ける気し…

「ピーーーィィユーーーーーーーーッ!」工房の窓の外、向かいの林の奥のほうから、黒くて暗い空気を突き破るような牡鹿の声。月は無い。星空といえば言えなくも無いが満天の星というほどでもない。晩秋の高曇りのせいか、明るくて勢いのある星たちが闇夜の…

冬枯れの原野

六花亭の包装紙やお菓子のパッケージに描かれた、花の画家として知られる坂本直行氏だが、北海道では山岳画家や登山家としての業績や足跡の評価が高い。 近代登山の黎明期に、北大山岳部の初期メンバーとして日高山脈の未踏の峰々に立ち、十勝の原野に身体一…

ピヨロコタンの滝

日高山脈の懐深く、十勝川支流の札内川を遡った山の中にこの滝がある。 正式には(?)「ピョウタンの滝」と呼ばれ、この滝を中心にした周辺一帯がキャンプ場や公園として整備され、大勢のキャンパーで賑わう夏の一時期を除けば冷涼な空気と静寂を堪能するこ…

晩秋から初冬へ

先月10日に大雪山の峰々にかかった初雪は、ゆっくりとではありますが、あちこちの頂を白く塗り、峠の国道も夏タイヤでの通行を拒み始めました。 本州の3千メートル級の山々でも初冠雪が始まったようです。噴火で大勢の犠牲者を出した御嶽山でも、7人の不…

ルルは何処へ行った

この欄をたまにのぞいてくれる何人かのひとから聞かれます。「最近キツネたちの写真がないけどどうした?」「ルルは元気でいるの?」 (ウチで飼ってる訳じゃないから、ンナこと訊かれてもワッかりませーん。) 最後に見かけたのが6月の末だからもう3ヶ月…

アキアジフリーク

四半世紀ほど前からだろうか。 それまでは、「産卵の為の遡上を控えた鮭たちは絶食状態に入って、何も口にせずに淡水に慣れようとする。だからいくらそこに鮭がいてもエサなんかで釣れるもんじゃない。」と、それが常識だったのだ。 誰が始めたのか、まるで…